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人工股関節, MIS(THA)

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MIS人工股関節(THA)について

人工股関節置換術(人工股関節を取り付ける手術)は、国内でも年間4万件以上の手術が行われる一般的な治療法になっています。最近では、技術の進化により、従来に比べてより小さな切開で手術を行うMIS(最小侵襲手術法=さいしょうしんしゅうしゅじゅつほう)が可能になりました。MISは、皮膚、筋肉、靭帯(じんたい)の損傷を最小に抑えるため、術後の痛みが劇的に軽減し、早期のリハビリ・退院が可能となる画期的な手術方法です。
MISは、手術を受けた方に必ず喜んでもらえる、是非おすすめしたい方法なのですが、日本でMISを行っている施設はとても少なく、基本的な知識についてあまり知られていないのが現実です。
そこで、MISがみなさんのより身近になるよう簡単にまとめてみました。今、ひざや股関節が痛くて困っている方に、少しでも参考になれば幸いです。



人工股関節(THA)の手術にはいろいろな方法があり、施設によって多少違いますが、約20cmほど大きく皮膚を切開して行ってきました。したがって、術後の痛みもかなり強いため、リハビリを進めようとしても、なかなか進みませんでした。人工関節の対象となる患者さんは70歳以上の方がほとんどですから、大きな手術をすれば当然回復に時間がかかります。

一方MIS-THAといわれるものは、10cm以下の皮切で行われたTHAと定義されています。そして、MISによる利点としては、
 1) 手術侵襲(手術による患者さんの肉体的な負担)が少ない
 2) 術後の痛みが劇的に軽く、その分早期の回復が可能であること
 3) 在院日数の短縮
 4) 術後瘢痕が小さい
などが挙げられます。

 従来われわれはCharnleyの術式で行っており、その当時は、術後どんなにがんばっても退院まで、6週間以上、平均して2~3ヶ月が必要でした。一方、2005年9月からMIS-THAを行っていますが、それからは術後2週で退院可能になりました。
 そこまで劇的に回復が早くなった理由としては、何よりも患者さんの術後の痛み方がぜんぜん違うことだと思います(当然、まったく痛みが無いというのではありませんが、以前とは比較にならないほど楽という意味です)。

 今までは、THAの術後に患者さんのところに行きますと、つらそうな顔をして、「先生こんなに痛いとは思わんかった。あとどれくらいこの痛みが続くのですか」とよく聞かれたものでした。
 これに対しては、「大体2~3日したらだいぶ痛みは落ち着きますよ。今は痛いけど後で必ず楽になりますから、がんばってくださいね」と声をかけるしかありませんでした。

 しかし、MIS-THAをはじめてからは、翌日に患者さんのところに行っても、「多少は痛いけどこれくらいなら、我慢できるわ。これくらいのことだとわかってたら、もっと早くしてもらってたらよかった」と笑顔で言っていただけることが多くなりました。術直後に笑顔で話ができるというのは、よく考えてみればすごい改善です。

 2003年、わたしは、MIS-THAの手術および術後の患者さんをみることが出来ましたが、術後2,3日もすれば、トイレに行ったり、あっという間に歩けるようになるなど、その回復ぶりの速さは衝撃的でした。
 そこで、いろいろな準備をすすめ、2005年9月から開始しましたが、ナース、スタッフ一同、そして何よりも以前に人工股関節置換術を受けた患者さんがその回復の早さに一番驚いています。

 私自身、MIS-THAの患者さんをみる前までは、本当にそんなに痛みが楽なのか、そんなに早く歩けるようになるのか信じることができませんでした。
 私だけでなく、経験豊富な整形外科医の先生でも、実際に眼にしないと信じることは難しいでしょう。

 おそらく、この数年は、人工関節の歴史において、大きな転換期であり、新しい時代の幕開けだと思われます。

私が施術するMIS人工股関節について

 さて、最小皮切で、正確に手術を行うためには、まず術前の計画が一番大事です。
 人工股関節の対象となった方には、必ず術前にCTをとっていただきます。
 このCT像をコンピューターに取り込ませることによって、術前に3次元CTを作成し、コンピューター画面上で、シミュレーションを行い、個人個人で最適な人工関節のサイズを決定します(次項参照)。
 以前は、単純レントゲンだけで、術前計画をしていましたが、より正確な術前計画が行えるようになりました。

3D-CTによる術前シミュレーション

横から
横からみたところ
上から
上からみたところ
前から
前からみたところ

手術方法についてですが、患者さんの股関節の状態に適したMIS-THAを行っています。
 この方法でも、従来の人工関節に比べると、傷もずっと小さく、著しく早い回復が見込めます。ただ、この方法では、中臀筋の一部を切離しなくてはなりません。

 ごく最近ですが、いくら傷が小さくても、歩行するために大事な筋肉を傷つけておいて何が最小侵襲なものかという考えが一部にあり、筋肉をいっさい傷つけずに、人工股関節を行うことは出来ないものか工夫するグループが出てきました。

 2004年、ドイツのHeinz Röttingerは中臀筋と大腿筋膜張筋の間を進入することによって、筋肉をいっさい切ることなく人工関節を行い良好な成績を発表しました。

 この方法は、傷が単に小さいばかりではなくて、まったく筋肉を切らないため、術後の回復は著しく、理想的な究極のMISといえるでしょう。
 我々は、遅れること2年、2006年5月から、可能な限りこの方法を取り入れていますが、この手術を安全に行うためには、いろいろな条件を満たす必要がありますが、現在はほとんどの方に行っています。

 しかしながら、この手術を行った方は、筋肉をいためない分、さらに術後の痛みも軽く、筋肉の回復も早いため、驚くべきことに、全員術後4日以内に一本杖歩行または杖無し歩行が可能になっており、その威力を存分に発揮しつつあります。

 さて、現在の術後のリハビリテーションプログラムですが、術後翌日から可能であれば、歩行を許可しています。今までは痛くて手術後1週間ぐらいは、トイレに行くことはできず、非常に患者さんに負担をかけていました。今では、翌日から各自トイレに行っていただいておりますので(もちろん最初のうちは看護婦さんに手伝ってもらいながら)、これは患者さんにとって、MIS-THAの利点の一つとしてとても喜ばれています。

 このように痛みが少ないため、術後早くからリハビリが進み、少なくとも術後1週間で、みなさん杖歩行練習ができるようになっていますので、糸抜きの前に退院される方もいます。

究極のMIS-THA

79才 女性 両変形性股関節症 右側に筋肉をいっさい切らない究極のMIS-THAをおこないました。
傷は約8cmと小さく、術後2週間で退院されました。

究極のMIS-THA 1 究極のMIS-THA 2

術後回復の様子 歩行動画

76歳 女性
右股関節 THA(人工股関節全置換術) 10cm切開
手術で3cm程度 右脚長を伸ばし、脚長差をなくした
術後1週間
57歳 女性
左股関節 MIS THA(人工股関節全置換術) 10cm切開
術後1週間